新卒社員が感情的になりやすい背景とは
職場環境の変化とプレッシャー
新卒で入社してから1〜3年目の社員にとって、仕事にはようやく慣れてきたものの、まだまだ余裕があるとは言えない時期です。そんな中で、突然後輩が配属され、「教える側」「見本となる側」という立場になると、気持ちにプレッシャーがかかるのは当然のことです。
それまで「教えてもらう側」だった人が、急に「教える立場」になると、自分に自信が持てなかったり、「正しい指導ができているのか?」と不安になったりします。さらに、後輩がミスをしたり、指示を理解できなかったりすると、その分の業務が自分に跳ね返ってくるため、「なぜ分かってくれないのか」と焦りや苛立ちが生じやすくなります。
また、職場では常に「成果」や「効率」が求められます。自分の仕事で手一杯の中、後輩にまで気を配るのは負担も大きく、無意識のうちに感情的になってしまう人も少なくありません。
さらにやっかいなのは、自分の感情に気づかないまま積み重なっていくストレスです。「自分はそんなにイライラしていない」と思っていても、言葉や態度にトゲが出てしまうことがあります。これは本人にとっても後輩にとっても良い結果にはつながりません。
こうした背景から、「なぜ感情的になってしまうのか?」という原因を理解することは、感情をコントロールする第一歩となります。
「自分だって大変だった」という気持ち
感情的になってしまうもう一つの大きな要因が、「自分も同じように苦労したのに」という思いです。
たとえば、「私のときはもっと厳しかった」「ちゃんとメモを取って覚えたのに、どうしてこの子は覚えようとしないのか」など、自分の過去の経験と後輩の行動を比較してしまうことで、イライラが募ることがあります。
このような感情は、「正しさ」から来ていることが多いです。つまり、「自分が頑張ってきたように、この子も頑張るべきだ」と無意識のうちに考えてしまうのです。これは決して悪いことではありません。自分自身が努力してきた証拠でもありますし、成長したいと願っているからこその反応とも言えます。
しかし一方で、人にはそれぞれ成長のスピードがあり、受け取り方も異なります。同じ指導でも、すぐに理解する人もいれば、何度も繰り返さないと習得できない人もいるのが現実です。
「自分の時はこうだった」という基準だけで後輩を見てしまうと、思いやりや柔軟な対応が難しくなります。感情的になるのを避けるためには、「自分の過去の経験はあくまで参考にとどめる」ことが大切です。
また、世代によって価値観や働き方の捉え方も異なります。最近の新卒は「納得感」や「心理的安全性」を重視する傾向が強く、ただ言われたことをやるのではなく、「なぜそれをするのか」を知ることで動きやすくなる特徴があります。
つまり、指導する側が「昔の常識」に固執すると、かえってすれ違いや誤解が生まれてしまうのです。「相手は自分とは違う」という前提で関わることが、冷静な関係構築の第一歩です。

感情をコントロールするための基本マインド
相手も“初めて”であることを理解する
感情をコントロールするためにまず大切なのは、「後輩もまた、“初めて”の連続を経験している」という視点を持つことです。
新卒として入ってきたばかりの後輩は、社会人としての生活、仕事の進め方、上司や先輩との人間関係など、全てが新しく、緊張や不安でいっぱいです。中には、「怒られたらどうしよう」「失敗して迷惑をかけたらどうしよう」と、表には出さないまま内心ビクビクしている人もいます。
そんな状態で、先輩から少しでも冷たい口調や、イライラを含んだ態度をとられてしまうと、萎縮してしまい、本来の力を出せなくなることもあります。
このような状況を防ぐためにも、まずは「自分もかつては同じ立場だった」と思い出してみましょう。入社当初、右も左も分からなかった時期の自分を思い返すだけでも、後輩を見る目が変わってきます。
たとえば、「メモを取っていないように見えるけど、実は緊張して頭が真っ白になっているだけかもしれない」「何度言っても忘れるのは、言い方が難しいのかもしれない」など、相手の立場に立つことで、感情的な反応が少しずつ和らいでいきます。
また、“初めて”を経験している人に必要なのは、「安心感」と「寄り添い」です。それは必ずしも甘やかすということではなく、「あなたのことをちゃんと見ている」「成長を応援しているよ」という姿勢を示すことに他なりません。
冷静さを保つ「一呼吸」の習慣
感情的になってしまう瞬間には、たいてい「余裕がない」「焦っている」「うまくいかない」という状態が関係しています。そんなときに効果的なのが、「一呼吸おく」習慣です。
これは、実際に深呼吸をするという意味でもありますが、同時に「一度立ち止まって自分を客観的に見る」行動でもあります。
たとえば、後輩が指示を間違えたとき、「なんで間違えたの!?」と即座に言いたくなる気持ちを抑えて、3秒だけ黙って深呼吸してみる。その一瞬で、怒りの感情は少し落ち着きます。
そしてその3秒間に、「相手は悪気があったわけじゃない」「自分の伝え方に原因はなかったか?」と考えることで、対話のスタートが変わってくるのです。
また、感情的な言葉をそのまま口にしてしまうと、あとで後悔することが多いものです。言い方一つで人間関係は良くも悪くもなります。「その場の勢いで発言しないこと」は、職場で信頼を築くうえで非常に大切なスキルです。
加えて、「怒りを感じたら、一旦その場を離れてトイレに行く」「心の中で『今は冷静に』と唱える」など、自分なりの“感情のスイッチ”を持っておくのもおすすめです。
感情は完全に消すことはできません。でも、「出す前に整える」ことで、関係性を崩さずに済むのです。
冷静さを保つというのは、自分のためでもあり、後輩の成長のためでもあります。感情に流されないマインドを育てることで、結果的に職場全体の雰囲気も安定していくでしょう。

後輩との接し方におけるコミュニケーション術
伝え方ひとつで関係は変わる
仕事の指導や注意をするとき、「何を言うか」も大切ですが、それ以上に「どう伝えるか」が非常に重要です。どれだけ正しいことを言っていても、言い方によっては相手を傷つけたり、反発を招いたりすることがあります。
たとえば、同じ内容でも以下のような違いがあります。
- 「なんでこんなミスするの?」
→ 責められていると感じ、心を閉ざしやすい - 「ここ、もう一度一緒に確認してみようか」
→ 支え合う姿勢が伝わり、前向きになりやすい
このように、相手に伝わる印象は、言葉の選び方やトーンで大きく変わります。
特に新卒の後輩は、まだ自信も経験も少ないため、ちょっとした言葉で必要以上に落ち込んだり、「自分はダメだ」と感じてしまうこともあります。
だからこそ、「相手がどう受け取るか」を意識したコミュニケーションが求められます。感情的に伝えるのではなく、「相手に理解してもらう」ことを目的にするだけでも、話し方は変わってきます。
また、声のトーンや表情もコミュニケーションの一部です。無表情で淡々と話すより、少し笑顔を交えて話すだけで、相手は安心感を持ちます。安心感があるからこそ、指導がスムーズに届くのです。
仕事の指導とは、相手を責めるためにあるのではなく、「一緒に良くなっていくための対話」であることを忘れないようにしましょう。
フィードバックと叱責の違いを知る
新卒の後輩に対して、注意や指導をする場面は多くあります。そのときに大切なのが、「フィードバック」と「叱責」の違いを理解しておくことです。
フィードバックとは、相手の行動に対して具体的な改善点や良い点を伝え、次に活かしてもらうための言葉です。
叱責とは、感情を伴って相手を責めたり、否定したりする言葉です。
たとえば、後輩が報告を怠ったとき…
- 叱責:「なんで報告しないの?常識でしょ!」
→ 怒りや苛立ちが前面に出て、相手の防衛反応を引き起こす - フィードバック:「報告がないと次の作業に進めないから、次からは気づいた時点で教えてね」
→ 問題点と期待する行動が具体的に伝わり、相手も理解しやすい
このように、目的は「相手に改善してもらうこと」なのに、感情にまかせた叱責をしてしまうと、本来の目的が果たされず、むしろ関係を悪化させてしまいます。
フィードバックをうまく行うためには、以下のポイントを意識すると良いでしょう:
- 具体的に伝える:抽象的に「ちゃんとして」ではなく、「何がどうだったか」を明確に。
- タイミングを選ぶ:人目の多い場ではなく、落ち着いて話せる状況を作る。
- ポジティブな点も伝える:改善点だけでなく、「ここは良かったよ」と伝えることで、受け入れられやすくなる。
また、感情的になりやすい人ほど、「今すぐ言わなきゃ」と思いがちですが、必ずしもその場で伝える必要はありません。むしろ、少し時間をおいて自分の気持ちを整理してからの方が、建設的な言葉を選べることも多いのです。
「自分がどう伝えたか」よりも、「相手がどう受け取ったか」が、コミュニケーションでは最も重要です。相手の心に届く言葉を選ぶことで、信頼関係は確実に深まっていきます。

自分の感情に向き合うセルフケアの習慣
モヤモヤを書き出す“感情ノート”
職場での人間関係、とくに後輩指導において、どうしても感情が揺れ動くことは避けられません。イライラ、焦り、不安、自己嫌悪…。そういった感情を無理に抑え込むのではなく、きちんと自分の内側で受け止め、整理していくことが大切です。
そこでおすすめなのが、“感情ノート”をつける習慣です。やり方はとてもシンプルで、その日の終わりや休憩時間などに、今感じていることや出来事について思うままに書き出すだけ。
たとえば、
- 「後輩がまた報連相を忘れていた。なんで何度も言ってるのに直らないんだろう」
- 「怒るつもりはなかったのに、声を荒げてしまった。自己嫌悪…」
- 「もっと落ち着いて伝えられる方法を探したい」
こんな風に、素直な気持ちを言語化することで、自分の中にあった感情が明確になり、少しずつ落ち着いていくのを感じることができます。
ポイントは、「いいことを書こうとしない」ことです。ネガティブでも、不完全でもいいので、自分の気持ちに正直になることが目的です。
また、感情を可視化することで、「自分は今こういうことで悩んでいるんだ」と気づけたり、「あの時の怒りは実は焦りから来ていた」といった感情の奥にある本音にもアクセスしやすくなります。
誰にも見せる必要はありませんし、決まった形式もないので、気軽に始められます。続けるうちに、感情をコントロールする力が少しずつ養われていくはずです。
頼れる人に相談することの大切さ
感情のコントロールは、一人で抱え込むよりも、誰かに話すことでグッと楽になることがあります。
特に、同じように後輩を指導している同期や先輩に相談することで、「自分だけじゃなかった」と安心できたり、「そんなやり方もあるんだ!」と新たな視点を得られることもあります。
また、自分の話をしっかり聞いてくれる相手がいるだけでも、「分かってもらえた」という気持ちが感情を落ち着かせてくれるのです。
相談する際には、以下のような相手が理想です:
- 話を否定せず、受け止めてくれる人
- 同じような経験をしてきた人
- 客観的にアドバイスをくれる人
ただし、「誰かに話す=弱音を吐く」ではありません。むしろ、感情を整理して建設的に対処しようとする前向きな姿勢です。
また、もし相談できる相手が身近にいない場合は、企業の人事部や産業カウンセラー、社外のメンターなどを頼ることも選択肢の一つです。最近ではオンラインで相談できるサービスも増えているため、自分に合った方法を見つけるのが大切です。
自分の感情を誰かと分かち合うことは、恥ずかしいことでも弱いことでもありません。むしろ、自分自身を大切にするための一歩です。
セルフケアとは、体だけでなく「心の状態」にも気を配ること。感情的になってしまう背景には、心の疲れや孤独感があることが多いのです。だからこそ、自分の感情を受け止め、整えるための時間と手段を意識的に取り入れることが大切なのです。

成長する自分と後輩の関係を築くには
指導は“育てる”ではなく“一緒に成長する”
多くの新卒社員が後輩を指導するとき、「自分が教える立場なんだから、しっかりしないといけない」「完璧に指導できなければいけない」とプレッシャーを感じがちです。
しかし、実際には指導とは「一方的に育てる」ものではなく、「一緒に学び、成長していく」関係です。
たとえば、後輩に質問されて答えに詰まったとき、「なんで知らないの?」と責められるのではなく、「実は私もそれまだ分かってなくて、一緒に調べてみようか」と対応するだけで、場の空気は柔らかくなり、後輩との信頼関係も深まります。
また、後輩の行動に困ったとき、「この子をどうにかしなければ」と思うのではなく、「自分ができる関わり方は何か?」「伝え方に工夫の余地はあるか?」と自分にも目を向けてみることで、成長のチャンスに変えることができます。
完璧な先輩になる必要はありません。むしろ、「人としての温かさ」や「素直な姿勢」を見せることで、後輩の安心感や信頼を得やすくなるのです。
“教える”という立場に立つことで、自分自身の課題が見えてくることもあります。それは、社会人としての大きな学びであり、成長の証でもあります。
小さな成功体験を共有しよう
後輩との関係をより良くするためにおすすめしたいのが、「小さな成功体験を一緒に喜ぶ」ことです。
たとえば、
- 「初めて一人でお客様対応ができたね!すごいよ」
- 「報告の仕方、前より分かりやすくなってきたね」
- 「忙しい中でも、気づいて動いてくれて助かったよ」
こうした小さな成長をきちんと見つけて声に出すことで、後輩は「自分は見てもらえている」「成長している」と実感でき、やる気にもつながります。
また、先輩側にとっても、後輩の変化や努力を見つける力がつきますし、それを言葉にすることで自分自身の視野も広がっていきます。
ときには、指導がうまくいかず落ち込んだり、感情的になりそうな瞬間もあるかもしれません。そんなときこそ、過去に後輩と築いた前向きなエピソードを思い出してみてください。そこには必ず、「指導することで得られた喜び」や「関わってよかったと思えた瞬間」があるはずです。
感情的になるのを防ぐ最善の方法のひとつは、「人とのつながりに感謝し、喜びを見つけること」です。後輩の成長に寄り添いながら、自分も一緒に前に進んでいく。そんな関係こそが、職場を心地よい場所にしてくれるのです。
まとめ/感情的にならずに成長し合える関係性を築こう
新卒社員として2〜3年目を迎えると、仕事に慣れてきた一方で、新たな挑戦として後輩の指導という役割が加わります。この役割は、自身の成長にとって大きなチャンスである反面、思いがけないストレスや感情の揺れも引き起こすものです。
本記事では、感情的になってしまう原因として「職場のプレッシャー」「自分の過去との比較」といった背景を掘り下げ、それに対してどう向き合っていくかを具体的に解説してきました。
感情をコントロールするには、まず「後輩もまた初めての連続で不安な状態にある」という視点を持ち、冷静な判断ができるよう「一呼吸おく」習慣を身につけることが大切です。また、伝え方ひとつで相手との関係は大きく変わるため、叱責ではなくフィードバックを心がけましょう。
さらに、日々の中で自分の感情にきちんと向き合う時間も欠かせません。感情ノートでモヤモヤを整理したり、信頼できる人に相談することで、自分自身の心をケアする習慣を育てていくことが、感情的にならない土台になります。
そして何より大切なのは、後輩を指導することは「一方的に育てる」ことではなく、「一緒に成長していく」プロセスであるという認識です。小さな成功体験を一緒に喜び合いながら、信頼関係を築いていくことで、職場はより温かく、成長に満ちた場所になっていくでしょう。
感情的になることを責めず、そんな自分とも向き合いながら、一歩ずつ前に進む。そんなあなたの姿こそが、後輩にとっても大きな“学びのモデル”になるはずです。焦らず、丁寧に、成長のプロセスを楽しんでいきましょう。


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