傾聴力とは何か?
傾聴力の定義と重要性
社会に出て働き始めたばかりの新卒社員にとって、まず身につけたいスキルのひとつが「傾聴力(けいちょうりょく)」です。傾聴力とは、単に相手の話を聞くのではなく、「相手の話にしっかりと耳を傾け、内容や感情を理解しようとする力」のことを指します。
ビジネスの現場では、会話の目的が情報交換だけでなく、信頼関係の構築や問題解決にあることが多くあります。そのときに、相手の話をただ「聞く」だけでは不十分です。表面的な言葉だけではなく、相手の感情や背景にある意図まで汲み取ろうとする姿勢が、真の意味での傾聴であり、それを支えるのが傾聴力です。
この力は、上司や先輩、同僚との円滑なコミュニケーションを築くために不可欠なスキルです。特に新卒のうちは、自分が話すことよりも、まず「相手の話をどう聞くか」が大きな鍵になります。なぜなら、職場の多くの場面では、情報は「聞くこと」から始まるからです。
例えば、業務の指示を受ける場面、顧客からの要望を聞く場面、チームのミーティングなど、あらゆる局面で「ちゃんと聞けるかどうか」が、その後の行動の質を大きく左右します。つまり、傾聴力があるかどうかは、社会人としての基礎力を測る重要なポイントとも言えるでしょう。
また、傾聴力は「対人関係スキル」の中心でもあります。いくら専門知識や技術力があっても、相手の話をよく聞けない人は、人間関係でつまずきやすく、組織内での信頼を築きにくい傾向があります。
傾聴とただ聞くことの違い
よく「聞く」と「聴く」はどう違うのか?という質問があります。日本語の表記の違いからもわかるように、「聞く」は耳に入ってくる音や言葉を受け取ることを指します。一方で、「聴く」は意識的に相手の話を理解しようと耳を傾けることです。
具体的な例で考えてみましょう。あなたが上司から「明日までにこの資料を仕上げておいて」と言われたとします。ただ聞いていた場合、「明日までに資料を作る」という表面的な情報しか頭に残らないかもしれません。しかし、傾聴の意識があれば、「なぜ明日までなのか」「どんな目的でこの資料が必要なのか」「誰に見せるものなのか」といった背景まで把握しようとします。
この違いが、その後の行動や成果に直結します。目的を理解していれば、資料の内容やフォーマット、重点ポイントの選び方も自然と変わってくるはずです。
さらに、傾聴では言葉だけでなく「非言語情報」も重要になります。たとえば、声のトーン、話すスピード、表情、間(ま)などからも、相手の感情や考えが伝わってくることがあります。言葉には出ていないけれど、「ちょっと怒っていそうだな」「疲れているのかな」と気づくことができれば、適切な対応も取りやすくなります。
これはまさに、人間関係の潤滑油です。相手の気持ちに敏感になれる人は、周囲から「気が利く」「空気が読める」と好印象を持たれやすくなります。新卒のうちは、特にこうした周囲への気配りが信頼を得る第一歩となるので、傾聴力は非常に大切な資質と言えます。
また、傾聴には「受容」「共感」「確認」の3つの要素が含まれます。
- 受容:相手の話を否定せずに受け入れる姿勢。
- 共感:相手の気持ちに寄り添い、理解を示すこと。
- 確認:相手の意図を確かめながら、きちんと理解しているかをチェックすること。
この3つを意識するだけでも、会話の質はぐんと高まります。たとえば、話の途中で「それは大変でしたね」「つまり、こういうことですか?」といった相づちや確認を入れることで、相手は「ちゃんと聞いてくれている」と感じますし、信頼感も増します。
では、なぜ新卒のうちからこのようなスキルを意識して身につけるべきなのか?理由はとてもシンプルです。傾聴力は、年次や経験に関係なく、すぐにでも実践できるスキルだからです。
実際に、話す力よりも「聞く力」がある新卒社員は、周囲からの吸収が早く、業務にスムーズに適応できる傾向があります。相手の意図や背景をしっかり理解しようとする姿勢が、自然とその人の行動や学びの質を高めていくのです。
さらに、傾聴力が高い人は、「質問力」や「フィードバックの受け止め力」も向上しやすくなります。相手の話を正しく理解するからこそ、的確な質問ができるようになり、改善点や指摘も前向きに受け止められるようになります。
このように、傾聴力は他のビジネススキルとも密接に関わっており、まさにすべての社会人スキルの土台とも言えるでしょう。

新卒が傾聴力を身につけるメリット
上司や先輩との信頼関係を築く
新卒として社会に出ると、最初に直面するのは「わからないことだらけの環境」です。業務の進め方、報連相のタイミング、人間関係の距離感など、学校では学べなかった実践的な知識を毎日のように吸収していく必要があります。そんな中で、自分の評価を左右するのが「誰とどんな信頼関係を築けるか」です。
この信頼関係を築くために、もっとも有効なのが「傾聴力」です。なぜなら、職場における人間関係の多くは「コミュニケーションの質」で決まるからです。特に新卒のうちは、まだ十分な実績がないため、信頼は「言動」や「姿勢」から評価されます。その中でも「しっかり人の話を聞けるか」は、非常に重要な指標になります。
上司や先輩が新卒社員に対して最も求めていることの一つが、「素直さ」と「吸収力」です。つまり、自分の経験や知識をちゃんと聞いてくれて、それを前向きに受け取ってくれる姿勢があるかどうか。傾聴力が高いと、自然とこの2つが相手に伝わりやすくなります。
たとえば、仕事の指示を受ける際に、ただ「はい」と返事をするのではなく、「今のご説明は、○○という意味で合っていますか?」と確認したり、「○○の部分、もう少し詳しく教えていただけますか?」と質問するだけで、「この子はちゃんと話を聞こうとしているな」と好印象を持たれることが多いです。
また、上司や先輩が何気なく話す「職場のルール」や「過去の失敗談」にも耳を傾けられるかどうかで、その後の行動が大きく変わってきます。ベテラン社員が話す内容には、言葉になっていない“空気”や“暗黙知”が含まれていることが多く、それを読み取れる人ほど、職場に早くなじみ、信頼されやすくなるのです。
信頼関係が築ければ、ちょっとしたミスをしたときも「次は気をつけてね」とやさしくアドバイスをもらえたり、難しい業務を任せてもらえるようになります。つまり、傾聴力は「人に応援される新卒」になるための鍵とも言えるのです。
チームワークを円滑にする力
ビジネスの現場では、多くの仕事が「チーム」で進められます。一人で完結する仕事はごくわずかであり、上司、同僚、後輩、取引先といった複数の人と協力しながら成果を出す必要があります。その中で重要になるのが「チームワーク」です。
このチームワークを円滑に保つうえでも、傾聴力は大きな役割を果たします。なぜなら、傾聴力のある人は「相手の話を最後まで聞くことができる」からです。そしてそれが、職場での誤解や対立、すれ違いを防ぐことにつながるのです。
たとえば、チームミーティングの場面を想像してみてください。あるメンバーがアイデアを出したときに、他のメンバーが話の途中で否定的なコメントをしたらどうでしょうか?きっとその人は「もう発言したくない」と思ってしまうかもしれません。
一方で、傾聴力のある人は、相手の発言をさえぎらず、最後までしっかり聞きます。そして、「なるほど、そういう視点もあるんですね」と一度受け止めたうえで、自分の意見を述べるようにします。こうしたやり取りが増えると、チーム内の雰囲気が良くなり、お互いの意見を尊重し合う文化が生まれます。
新卒であっても、傾聴力があると、年次やポジションに関係なく「この人と一緒に仕事したい」と思ってもらえるようになります。人は、自分の話をしっかり聞いてくれる人に好感を持ちます。そして、そのような人と仕事をするときに、安心感や信頼感が生まれ、結果としてチームの成果も向上していくのです。
また、傾聴力があると、メンバー同士の小さな変化や悩みにも気づけるようになります。たとえば、「最近あの人、元気がないな」と感じたときに、「大丈夫?」と一言声をかけられるかどうか。こうした気づきは、表面的なスキルではなく、相手の話や様子をちゃんと受け止めようとする姿勢から生まれます。
そして、これは将来リーダーになったときにも非常に重要な視点となります。どんな優秀なリーダーも、最初は「人の話をしっかり聞く力」から始まっています。新卒のうちから傾聴力を養っておくことで、チームの雰囲気を読み取り、問題の芽を早めに摘むスキルが育っていくのです。
さらに、傾聴は「感情のケア」にもつながります。ビジネスの場では、成果だけでなく、そこに至るまでのモチベーションや感情のコントロールも重要です。傾聴できる人は、相手の「疲れている」「悩んでいる」「モヤモヤしている」といった気持ちを察知しやすく、それに応じた言葉や対応ができるため、チーム全体のパフォーマンスも高まりやすくなります。
このように、傾聴力は決して「受け身のスキル」ではなく、周囲との関係性を主体的に築いていくための「攻めのスキル」なのです。自分ひとりの成長にとどまらず、チームや職場全体の空気を変える力があることを、新卒のうちに理解しておくと、今後のキャリアにも大きな差がついてくるでしょう。

傾聴力を鍛えるための具体的な方法
日常の会話でできるトレーニング
傾聴力は、特別な講座や研修を受けなくても、日々のコミュニケーションの中で十分に鍛えることができます。むしろ、毎日の会話こそが一番の練習場だといっても過言ではありません。新卒のうちは、上司や先輩、同期とのやりとり、さらにはプライベートでの友人や家族との会話まで、あらゆる場面で傾聴力を磨くチャンスが転がっています。
まず取り組みたいのが、「相手の話を途中で遮らずに最後まで聞く」という基本中の基本です。会話の中で、自分の意見や感想を言いたくなる気持ちは誰にでもあります。しかし、相手がまだ話している途中でそれを挟んでしまうと、「この人は話を聞いていない」と感じさせてしまいます。
ここで意識したいのは、「沈黙を恐れない」ということ。相手が話し終えたあと、すぐに返答しなければという焦りから、考える前に言葉を発してしまう人は少なくありません。でも、実は一呼吸置くことで、相手の話の真意を整理する時間が生まれ、自分の返答の質も上がるのです。
次に意識したいのは、「相づち」と「うなずき」の活用です。傾聴は無言で聞き続けるだけではなく、適度に反応を示すことで、相手に「聞いてもらえている」という安心感を与えることができます。
例えば、
- 「なるほど、そうなんですね」
- 「それって、結構大変だったんじゃないですか?」
- 「それで、どうなったんですか?」
といった言葉を挟むだけでも、相手は自分の話に興味を持ってもらえていると感じ、もっと話したくなります。これは特に初対面やあまり親しくない人との会話で有効で、信頼関係を築く第一歩になります。
また、「相手の感情に注目する」という意識も大切です。話の内容だけでなく、「どんな気持ちでその話をしているのか?」に目を向けてみましょう。表情、声のトーン、言葉の選び方から、相手が今どんな状態にあるのかを読み取るクセをつけることで、傾聴力は確実に向上していきます。
たとえば、相手が仕事の愚痴をこぼしているとき、単に内容を聞くだけでなく、「この人は不満よりも不安を感じているのかもしれない」と感じ取ることで、返す言葉が変わってくるでしょう。
このように、日常の会話でも「受け止める・気づく・返す」という意識を持って接することで、傾聴力は自然と鍛えられていきます。
フィードバックの受け取り方を工夫する
もうひとつ、傾聴力を鍛えるうえで非常に効果的なのが、「フィードバックを受けるときの姿勢」を見直すことです。新卒のうちは、上司や先輩からさまざまな指摘やアドバイスを受ける場面が多くあります。こうしたフィードバックの受け取り方によっても、傾聴力は大きく左右されます。
まず大切なのは、「否定せずにまず受け止める」という姿勢です。たとえば、上司から「この書類、少し見づらいね」と言われたときに、「いや、自分では見やすく作ったつもりです」と即座に反論してしまうと、そこで対話は終了してしまいます。
一方で、「なるほど、見づらいと感じられた点について、具体的にどのあたりでしたか?」と返せれば、それは傾聴の姿勢として非常に好ましい反応です。このような態度を取れる人は、フィードバックの意図を正確に理解しようとするため、結果的に成長スピードも速くなります。
また、「フィードバックをもらう=自分を否定されること」と捉えるのではなく、「自分の伸びしろを見つけてもらえている」と前向きに受け止める意識を持つことも大切です。そのためには、フィードバックを聞いているときにメモを取りながら、「相手が何を伝えたいのか?」に集中する習慣をつけましょう。
ここで有効なのが、「リフレクティブリスニング(反復的傾聴)」という手法です。これは、相手が言ったことを自分の言葉で要約しながら返すことで、理解のズレを防ぐというテクニックです。
例:
上司:「この資料、ちょっと構成がわかりづらいかな」
自分:「構成がわかりづらいというのは、全体の流れが見えにくいということでしょうか?」
このように、相手の言葉を咀嚼して返すことで、「ちゃんと聞いてくれているな」と感じてもらえるだけでなく、自分自身の理解度も深まります。まさに一石二鳥の傾聴トレーニングです。
加えて、フィードバックの後に「ありがとうございました」と一言添える習慣も大切です。感謝の言葉は相手の伝える意欲を高め、あなた自身の人間関係にも好影響を与えます。
日々の業務の中で、自分が受け取る言葉すべてを「学びのチャンス」と捉えること。それが傾聴力を継続的に磨く最短ルートなのです。

傾聴力が将来のマネジメントにどう活きるか
部下の本音を引き出すスキルとして
新卒のうちはまだ想像しづらいかもしれませんが、数年後には「部下を持つ立場」になる可能性があります。そのとき、単に指示を出すだけでなく、「人を動かす力」が求められます。つまり、マネジメントです。そしてこのマネジメントを支える基礎スキルこそが「傾聴力」なのです。
マネジメントというと、「決断力」や「戦略思考」「問題解決力」といった“強い”スキルに目が向きがちです。しかし実際の現場では、「人の話をきちんと聞けるか」「部下の気持ちに寄り添えるか」といった“柔らかい”力が、チーム運営の鍵を握ります。
とくに重要なのが、部下の「本音」を引き出せるかどうか。職場では、部下が常に本心を話してくれるわけではありません。遠慮や気遣い、不安などから、言いたいことを飲み込んでしまう人も少なくありません。こうした声なき声をキャッチするには、「この人になら話せる」と思ってもらえる信頼感が不可欠であり、それを築くのが傾聴力なのです。
たとえば、部下が「実は今の仕事に不安を感じている」と思っていても、それを言い出せる環境がなければ、モチベーションが下がり、ミスや退職につながるかもしれません。そこでマネージャーが、日頃から部下の表情や態度、言葉の変化に気づき、「最近どう?困っていることない?」と自然に声をかけられると、部下は少しずつ心を開いてくれるようになります。
ここで大切なのが、「アドバイスを急がないこと」です。傾聴とは、相手の話を評価したり結論づけたりするのではなく、「まず受け止める」こと。部下が悩みを打ち明けたとき、「じゃあこうしたら?」とすぐに答えを返すよりも、「そうなんだ、それはしんどいね」「その気持ち、わかるよ」と共感することで、相手の安心感は何倍にも増します。
そして、安心して話せる関係が築ければ、部下は自分から改善策を考えるようになります。つまり、傾聴によって「自走する人材」が育つというわけです。これは一時的な対応ではなく、チーム全体の成長にもつながる非常に価値のあるアプローチです。
傾聴がもたらすリーダーシップの質の向上
リーダーに求められるのは、単に指導力や決断力だけではありません。「この人のためなら頑張ろう」と思ってもらえる人間的な魅力や信頼性が必要です。そして、それを育むための最も身近な手段が、日常の「傾聴」です。
実際、社員のエンゲージメント(自発的な貢献意欲)に最も影響を与える要素は、「上司との関係」と言われています。部下は、上司に自分の話を聞いてもらえていると感じたときに、仕事へのやる気や安心感が高まりやすくなります。
ここでポイントとなるのが、「心理的安全性」です。これは、チーム内で自分の意見を自由に言える環境、失敗を責められない風土のことです。傾聴力のあるリーダーは、この心理的安全性を高めることができます。
たとえば、会議で部下が意見を出したとき、「それは違うよ」とすぐに否定するのではなく、「なるほど、そういう視点もあるね。もう少し詳しく聞かせて」と受け止める姿勢を見せることで、周囲も安心して意見を言えるようになります。
また、傾聴力の高いリーダーは、チームの雰囲気や課題に早く気づきやすくなります。「最近チームがバラバラしているな」と感じたら、1on1面談を通じて一人ひとりの声を聞き、改善の糸口を探る。こうした対応は、まさに傾聴力があるからこそできることです。
さらに、傾聴は「多様性の理解」にもつながります。現代の職場は、年齢、性別、価値観、働き方など、多様な背景を持つ人が共に働く場です。自分とは違う考えを持つ相手に対しても、「この人はどういう視点からそう思っているのだろう?」と関心を持ち、耳を傾けられることが、多様性を活かすマネジメントの第一歩となります。
このように、傾聴力は「人に寄り添いながら導く」リーダーシップの質を大きく高めます。厳しい指導だけでは人はついてきません。共感と信頼の土台があってこそ、チームは成果を出せるのです。
そしてその土台は、新卒のときからコツコツと積み重ねることができます。今、上司や先輩の話に丁寧に耳を傾けているその姿勢が、将来、自分がリーダーになったときに部下から信頼される力へと変わっていきます。

職場での傾聴力実践例
ある新卒社員の成長ストーリー
ここまで傾聴力の大切さや育て方についてお伝えしてきましたが、「実際に職場で傾聴力を発揮するって、どういうこと?」と疑問に思っている方も多いかもしれません。そこでここでは、ある新卒社員の事例をもとに、傾聴力がどのように職場で活きたのかをご紹介します。
登場するのは、Aさんという新卒1年目の社員。営業職として配属されたものの、最初は電話対応や資料作成、上司の同行といったサポート業務が中心でした。Aさんは、特に目立った実績を出していたわけではありませんが、上司や先輩からは「しっかり話を聞く」「いつも相手の話に耳を傾けている」と高く評価されていました。
あるとき、Aさんが関わっていた営業案件でトラブルが発生しました。クライアントの要望が社内の提案内容と食い違っており、クレームに発展しそうな状況だったのです。通常であれば、経験豊富な先輩が対応する場面ですが、Aさんは自ら「一度、お客様のお話をしっかり伺わせてください」と申し出ました。
Aさんは、先入観を持たず、クライアントの不満や疑問を丁寧にヒアリングしました。その際、相手の言葉だけでなく、声のトーンや間の取り方、表情にまで注意を払い、共感を示しながら話を引き出していきました。結果として、相手は次第に落ち着きを取り戻し、「実は最初から怒っていたわけではなく、ちゃんと話を聞いてもらえなかったのが辛かった」と本音を打ち明けてくれたのです。
この一件を通じて、Aさんの対応力と信頼性は社内外から高く評価されました。そして後日、同じクライアントから「Aさんに担当してほしい」という指名が入るまでになったのです。
この事例が示すように、傾聴力は単なる“聞き役”で終わるスキルではなく、問題解決や信頼構築の強力な武器となります。話し上手でなくても、人の話を“ちゃんと聞ける”人は、確実に周囲からの信頼を勝ち取っていくのです。
先輩や上司から評価された具体的な行動
Aさんのように、傾聴力が評価される場面は、他にもたくさんあります。実際に職場で高く評価されやすい「傾聴的な行動」をいくつかご紹介します。
1. メモを取りながら話を聞く
話を聞くときに、相手の目を見ながらも要点をしっかりメモに残す。これは、「あなたの話を大切にしています」という無言のメッセージになります。会話の最後に「このように理解したのですが、合ってますか?」と確認することで、信頼度がさらに上がります。
2. 会話の中で相手の言葉を繰り返す
たとえば、上司が「この件は今週中に片づけたい」と言ったとき、「わかりました、“今週中”がポイントですね」と返す。こうした“反射的傾聴”のテクニックは、聞き間違いやすれ違いを防ぐと同時に、相手に安心感を与えます。
3. 感情に寄り添うリアクションを取る
ただ情報を聞くだけではなく、「それは大変でしたね」「お疲れさまです」といった感情への反応を添えることで、相手との距離が縮まります。ビジネスでは感情のケアが軽視されがちですが、実はとても大切な要素です。
4. 周囲の変化に気づいて声をかける
「最近、ちょっと元気がないな」と感じた同期に「大丈夫?何かあった?」と自然に声をかけられることも、立派な傾聴の一歩です。言葉にされない気持ちを感じ取ろうとする姿勢は、職場全体の雰囲気を明るくします。
5. 自分の意見を述べる前に、まず相手の話を受け止める
議論の場で、反論する前に「まずはその意見を聞かせてほしい」と姿勢を見せることで、相手は「この人は話しやすい」と感じるようになります。話しやすさは、チームにおける心理的安全性を生み出すカギでもあります。
このような行動はすぐに実践できるものばかりですが、積み重ねることで、確実に周囲からの信頼や評価につながっていきます。そして将来、あなたがマネージャーやリーダーになったときに、「この人についていきたい」と思ってもらえる土台となっていくのです。

まとめ/「聞く力」は、あなたのキャリアを静かに支える土台になる
社会人生活のスタート地点に立ったばかりの新卒の皆さんにとって、「傾聴力」は目に見えないスキルでありながら、非常に大きな影響力を持つ力です。ただ「話を聞く」だけではなく、「相手の言葉の奥にある感情や意図を受け止める力」。それが傾聴力の本質です。
本記事では、傾聴力の定義から始まり、新卒のうちに身につけるメリット、日常の中で鍛える方法、将来的なマネジメントへの応用、そして実際の職場での活用例まで、幅広く解説してきました。
ポイントは、「聞くことは、誰にでも今すぐできる」ということです。特別な才能や知識は必要ありません。上司や先輩との会話、同期との雑談、お客様とのやりとりなど、すべての会話が練習の場になります。
新卒のうちは、知識や経験で周囲にかなわないと感じることも多いでしょう。でも、話をきちんと聞ける人、相手の気持ちに寄り添える人は、それだけで一目置かれる存在になれます。そしてその力は、信頼関係を築く基盤となり、やがてあなたのリーダーシップへとつながっていきます。
将来、部下を持ったときにも傾聴力は非常に役立ちます。「どうやって育てるか」ではなく、「どうやって本音を引き出すか」「どうやって寄り添うか」が、今のマネジメントでは求められています。そのためにも、今のうちから傾聴力を意識して育てていくことが、自分の未来への投資になります。
すぐに大きな成果が見えるわけではありませんが、確実にあなたの価値を高めてくれる傾聴力。ぜひ今日から、日常の会話の中で少しずつ意識してみてください。その一歩が、あなたのキャリアの基盤を強く、しなやかにしてくれるはずです。


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