第1章 お客様に怒られるのは営業の宿命?
なぜ営業職は怒られやすいのか
営業職に就いて間もない新卒や若手社員がまずぶつかる壁のひとつに、「お客様から怒られる」という場面があります。社会人としてはじめての実践の場で、感情をぶつけられる経験はとてもショックなものです。「自分が悪いのか?」「もうこの仕事は向いていないのでは?」と悩む人も少なくありません。
そもそも、なぜ営業という職種は怒られやすいのでしょうか。
その理由は、営業職が「お客様と最前線で接する仕事」だからです。企業としてのサービスや商品、対応への不満があったとき、それを直接伝える窓口になるのが営業担当です。たとえ自分の責任ではない事柄であっても、まず営業が矢面に立つことになります。
また、営業はお客様との信頼関係がすべてです。そのため、些細なミスでも「信頼を裏切られた」と感じられることがあり、強い言葉で怒られる場合もあります。これは感情をぶつけているというより、「信頼しているからこそ、きちんと改善してほしい」という裏返しでもあるのです。
新人のうちは、自分だけが怒られているように感じがちですが、ベテランでもお客様から厳しい言葉をもらうことはあります。つまり、営業職である以上、誰もが一度は経験する“通過点”なのです。
怒られること=失敗ではない理由
では、「怒られること」はすなわち「失敗」なのでしょうか?
答えは、必ずしもそうではありません。むしろ、「お客様が怒ってくれた」ことは、ある意味チャンスとも言えます。
なぜなら、本当に期待されていなかったり、関心を持たれていなかったりする相手には、怒ることすらしないからです。期待していたからこそ、感情が動き、言葉が出る。つまり、怒られるというのは、お客様があなたやあなたの会社にまだ「期待している」証拠なのです。
また、営業の世界では「怒られたあとの対応」が評価につながる場面も多くあります。適切なフォローをすれば、むしろ怒られた経験が「信頼を取り戻すチャンス」に変わることもあるのです。
このように、「怒られる」という経験は、単なるマイナスではなく、自分の成長のきっかけになる大切な出来事でもあります。もちろん、怒られた直後は落ち込むこともあるでしょう。しかし、その感情にとどまらず、「なぜ怒られたのか」「どうすれば次はうまくできるか」と考えることで、次の一歩につなげることができます。

第2章 怒られたときの第一対応が大切
感情的に反応しないコツ
お客様から怒られたとき、真っ先に大切なのは「感情的に反応しないこと」です。これは言葉で言うほど簡単ではありません。とくに新卒や入社1〜3年目の若手社員にとっては、自分を否定されたように感じ、動揺してしまうのが自然な反応です。
しかし、そこで感情的になってしまうと、状況はさらに悪化します。お客様は「冷静に対応してくれる」と期待して話をしているため、感情で返してしまうと、「話が通じない」「社会人として信頼できない」と見なされてしまう可能性があります。
まずは、深呼吸を一度。
そして、「この人は私自身に怒っているのではなく、今の状況に不満があるのだ」と意識的に自分に言い聞かせましょう。これは“人格否定”ではなく、“業務上の問題への指摘”だと捉えることができれば、冷静さを取り戻しやすくなります。
次に重要なのは、相手の話をさえぎらずに最後まで聞くことです。途中で反論したくなる気持ちがあっても、まずは「相手が何に怒っているのか」を理解することに徹しましょう。この「傾聴」の姿勢が、次の信頼回復に大きくつながっていきます。
冷静に対応するための5ステップ
怒られた際に冷静さを保ち、適切に対応するための「5つのステップ」をご紹介します。これは新人営業でもすぐに実践できる方法です。
ステップ1:姿勢を正す
人は無意識に態度に出るものです。背筋を伸ばし、相手の目をしっかりと見て話を聞くことで、「誠意を持って向き合っています」という意思表示になります。
ステップ2:相手の話を最後まで聞く
途中で口を挟まず、「なるほど…」「ご指摘ありがとうございます」などの相づちを挟みながら、話を遮らずに聞きましょう。相手の不満を“受け止める器”を示すことが重要です。
ステップ3:共感と謝罪を伝える
「ご不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ございません」と一言、気持ちを込めて謝ることが信頼回復の第一歩になります。事実確認の前に、まず感情に寄り添うことが大切です。
ステップ4:事実を確認する
「確認させていただきたいのですが…」という形で、問題の背景や内容を冷静に整理していきます。謝罪したからといって、自分に100%非があるとは限りません。原因の把握はフェアに行いましょう。
ステップ5:今後の対応を明確に伝える
「今後はこのような対応をいたします」「○日までにご報告いたします」など、再発防止策や対応方針を明確に伝えます。これにより、お客様は「改善されるなら、信頼してみよう」と思えるようになります。
この5ステップを意識することで、「怒られた」状況を冷静に乗り越える力がついていきます。何よりも大切なのは、“怒られたこと”にとらわれるのではなく、“怒られた後にどうするか”に意識を向けることです。

第3章 怒られた経験を成長につなげる
自分の対応を振り返る方法
怒られた直後は、どうしても感情が先立ち、「もう無理だ」「なんで自分ばかり…」と自己否定のループに入ってしまいがちです。しかし、営業職として長くやっていくには、「反省」と「自己否定」を分けて考える力が必要です。
まずは落ち着いた時間を確保して、自分の対応を客観的に振り返ってみましょう。具体的には、以下の3つの視点から考えると整理しやすくなります。
① 事実ベースで振り返る
「何が起きたのか?」「そのとき自分はどう対応したのか?」を、主観を交えずに記録します。感情ではなく、起きた出来事にフォーカスすることが重要です。
② 改善点を抽出する
怒られた原因に、自分にできることはあったのかを考えます。たとえば「事前確認が甘かった」「報告が遅れた」など、自分で改善できる行動に目を向けると、次に活かせるヒントが見えてきます。
③ 次の行動に置き換える
「次からはこうする」と行動レベルで改善策を決めることで、ただの反省で終わらず、成長につながります。ポイントは、他責ではなく“自分でコントロールできること”に注目することです。
この振り返りを日常的に行うことで、失敗やトラブルを「自己成長の材料」として活用できるようになります。
フィードバックをもとに改善する習慣
怒られたとき、自分だけで抱え込まずに、上司や先輩にフィードバックをもらうことも大切です。新卒や若手社員にとって、まだ見えていない視点をもらえることは非常に貴重です。
たとえば、「この対応は相手にどう映っていたと思う?」といった問いかけをしてもらうと、自分では気づけなかった点に気づけます。また、同じような場面を経験した先輩が、どのように乗り越えたのかという実例も聞けるかもしれません。
ここで意識したいのは、フィードバックを「ダメ出し」ではなく、「成長のヒント」として受け取る姿勢です。最初は悔しいと感じることもありますが、「今ここで気づけてよかった」と思えるようになると、精神的にもぐっと楽になります。
さらに、同じミスや注意を繰り返さないように、「自分なりのチェックリスト」を作るのも有効です。たとえば「納期確認の際は、口頭だけでなくメールで確認を取る」「重要な報告は上司にもCCを入れる」など、日々の小さな工夫の積み重ねが、怒られる頻度を減らしてくれます。
怒られたことは決して恥ずかしいことではありません。それをどう受け止めて、どう変わっていくかこそが、社会人としての真価です。むしろ、失敗を繰り返しながらも改善し続ける姿勢こそ、お客様や上司から本当の信頼を得るカギとなります。

第4章 落ち込みやすい人のメンタルケア
気持ちをリセットする習慣とは
営業職に限らず、社会人として働いていれば、怒られることやうまくいかない経験は誰しもあります。ですが、とくに新卒や若手のうちは、経験値が少ない分だけ、一度の失敗や注意に対して「自分はダメだ」と感じやすく、心に大きなダメージを受けやすい傾向があります。
そうしたときに大切なのが、「気持ちをリセットする習慣」を持つことです。気持ちが落ち込んだまま次の仕事に臨んでしまうと、集中力が下がり、ミスを重ねてしまう…という負のループに陥ることもあります。
まずおすすめしたいのが、「一度立ち止まる時間」を意識的に作ることです。たとえば、昼休みに外の空気を吸いに出る、コンビニまで散歩してみる、トイレの個室で深呼吸をするだけでも構いません。物理的に“その場”を離れることで、気持ちが整理されやすくなります。
また、「紙に感情を書き出す」方法も効果的です。怒られたこと、言われた内容、自分が感じたことをすべて書いてみると、頭の中のモヤモヤが整理され、客観的に状況を見つめ直すことができます。「なんでこんなことで落ち込んでいたんだろう?」と気づけることもあります。
日々のストレスが蓄積しないよう、「小さなリセット」を習慣にすることが、メンタルの安定につながります。これは決して特別な能力ではなく、自分でつくっていける習慣です。
誰かに話すことの大切さ
もう一つ、メンタルケアとして非常に重要なのが、「誰かに話す」ことです。営業職の悩みは、ひとりで抱え込むとどんどん重たくなってしまいます。自分の中で考えすぎて、実際よりも悪い方向に受け取ってしまうこともあるからです。
上司や先輩、同期、信頼できる友人など、話しやすい相手を見つけて、「こんなことがあって落ち込んでいる」と素直に話してみましょう。自分の気持ちを言葉にすることで、驚くほど心が軽くなるものです。
もし、「上司には言いにくい」「同僚にも相談しづらい」と感じるなら、社外の人やキャリアアドバイザー、SNS上のコミュニティなどを活用するのも一つの手です。とくに新卒1〜3年目の若手社員向けの悩みを扱う場は、近年増えてきています。同じような経験をしてきた人の話を聞くだけでも、安心感が得られることがあります。
ここで大切なのは、「話すことで答えをもらう」のではなく、「話すことで自分の気持ちを整理する」ことを目的にすることです。話しているうちに、「本当はこうしたかったのかも」「あのときの自分も頑張ってたな」と気づける瞬間があります。
人に頼ることは、決して甘えではありません。社会人として長く働いていくには、「自分のメンタルを自分で守る」ことも立派なスキルです。その手段のひとつとして、誰かに話す時間を大切にしてみてください。

第5章 怒られた経験は“信頼”に変わる
お客様との関係を修復する方法
怒られた経験は、つらく、恥ずかしく、できれば忘れたい出来事かもしれません。しかし実は、その“あと”の行動次第で、信頼関係をより強く築けるチャンスになることがあります。
たとえば、怒られたあとにすぐフォローの連絡を入れたり、進捗状況をこまめに報告したりすることで、「あのときの反省を行動に移している」と相手に伝わります。この“フォロー力”こそが、営業職に求められる重要なスキルのひとつです。
特に、以下の3つのポイントを意識すると、関係修復がスムーズに進みます。
① 謝罪はその場限りにしない
その場で謝罪して終わりにするのではなく、数日後や次回の訪問時にも「先日はご迷惑をおかけしました」と一言添えることで、誠意が伝わります。繰り返し謝ることで、相手に「この人はちゃんと覚えている」と安心感を与えることができます。
② 改善した点を具体的に伝える
「ご指摘いただいた点について、社内で共有し、今後は〇〇という手順に変更しました」と、実際にどう改善したのかを報告することで、怒った側も「言った意味があった」と納得しやすくなります。
③ 自分の言葉で感謝を伝える
怒られたことに対しても、「気づかせていただいてありがとうございました」と前向きに感謝を伝えると、相手の心にも変化が生まれます。「この若い営業、なかなかやるな」と評価されるきっかけにもなるのです。
信頼は一朝一夕で築けるものではありませんが、「怒られたあとにどう動いたか」は、その後の関係性に大きな影響を与えます。恐れず、丁寧に、粘り強く対応していきましょう。
ピンチがチャンスになる理由
「怒られる」という出来事は、間違いなくピンチです。しかし、そのピンチをどう捉えるかで、結果は大きく変わります。実は、営業職の中には「怒られたことがきっかけで、むしろ関係が深まった」「一番厳しかったお客様が、今では一番の味方」という体験談が多数あります。
これは、怒りという感情を通じて、お客様が“本音”を見せてくれた証とも言えます。その本音に誠実に向き合い、改善の努力を続けたからこそ、相手も心を開いてくれるのです。
また、怒られる経験を重ねることで、自然と「先回りして動く力」や「トラブルを未然に防ぐ意識」が身についていきます。これこそが、若手営業が“信頼される営業”へと成長するための、大きな糧になります。
ピンチの中には、必ずチャンスの種が隠れています。怒られたことをただの苦い思い出にせず、そこから何を得られるかに目を向けてみましょう。
営業という仕事は、数字や成果だけでなく、「人との関係」によって成り立つ職種です。その関係性を深めるためには、時に衝突も必要であり、そこからしか得られない信頼もあるのです。

まとめ
営業職において、お客様から怒られる経験は決して特別なものではありません。特に新卒や社会人1〜3年目の若手社員にとっては、「自分が責められている」と感じやすく、大きなストレスになることもあります。しかし、怒られることは決して“失敗”の証ではなく、むしろ信頼を得るための大切な通過点とも言えるのです。
まず大切なのは、怒られたときに感情的にならず、冷静に対応すること。相手の話をしっかりと聞き、共感と謝罪を伝えた上で、事実確認と改善策を丁寧に進めることで、状況を落ち着かせることができます。そして、その場限りの対応で終わらせず、後日しっかりとフォローを入れることで、相手からの信頼を取り戻すことも十分に可能です。
また、怒られた経験を自分の成長につなげるためには、感情に流されずに「何が原因だったのか」「次にどう活かせるのか」を振り返る習慣を持つことが重要です。上司や先輩からフィードバックをもらったり、自分なりに改善策をチェックリスト化したりすることで、同じミスを繰り返さないよう意識的に行動できるようになります。
一方で、怒られたことによりメンタルが落ち込んでしまう場合もあるでしょう。そんなときは、気持ちをリセットする習慣を持つこと、そして誰かに話すことが心の回復につながります。ひとりで抱え込むのではなく、信頼できる誰かに悩みを打ち明けることで、客観的に自分を見つめ直すことができ、次への一歩を踏み出しやすくなります。
最終的に、怒られたあとにどう行動したかが、あなたの評価を左右します。誠実な対応を続けることで、かえって「頼れる営業」としてお客様から認められるようになることもあります。ピンチの中には必ずチャンスがあります。怒られたことに怯えず、それをきっかけに自分の成長と信頼関係の構築につなげていきましょう。
営業という仕事は、人と人との関係によって成り立つもの。だからこそ、感情のやりとりが発生するのも自然なことです。大切なのは、その感情にどう向き合い、どう乗り越えるかです。今回の記事が、怒られることに悩む若手営業の皆さんの背中を、少しでもそっと押す存在になれば幸いです。


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