自己PRとは?基本を押さえよう
自己PRの目的と役割
就職活動やキャリア形成の場で必ずといっていいほど求められる「自己PR」。でも、そもそも自己PRって何のためにするのか、はっきり理解できていない人も多いのではないでしょうか。
自己PRの目的は、自分が「企業にとってどんな価値を提供できる人材か」を伝えることにあります。単に「私は○○ができます!」とアピールするだけではなく、その能力や経験がどのように企業に貢献するのか、相手の視点に立って伝える必要があるのです。
多くの新卒や若手社会人は、「自分のすごいところを話さなきゃ」と思ってしまいがち。でも、自己PRの本質は“自慢”ではありません。企業のニーズと自分の強みがマッチしていることを「具体的に」「納得感をもって」伝えることが求められているんです。
たとえば、「私は責任感が強いです」とだけ言われても、「本当に?」と感じてしまいますよね。でも、「ゼミのリーダーとして、10人のメンバーをまとめながら期日通りに研究発表を成功させた経験があります」と伝えれば、責任感のある行動がイメージでき、説得力が増します。
つまり、自己PRは「自分の魅力を、相手の立場を意識しながら、根拠をもって伝えるプレゼン」のようなもの。企業に選ばれるための戦略的なコミュニケーションなのです。
自己紹介との違い
ここでよくある混同が、「自己紹介」と「自己PR」の違いです。面接の最初に「自己紹介をお願いします」と言われると、つい自己PRまで話してしまう人もいますよね。
自己紹介は、「名前・経歴・簡単な趣味」など、自分についての基本的な情報を伝えるもので、いわば“名刺代わり”のもの。一方で自己PRは、「自分の強みや特性」を具体的に伝えることで、「この人と一緒に働きたい」と思わせるためのアピールポイントです。
簡単に整理すると、以下のようになります:
項目 | 自己紹介 | 自己PR |
---|---|---|
目的 | 初対面の場での基本的な情報提供 | 自分の魅力・強みを伝えるためのプレゼン |
内容 | 名前、学歴、趣味など | 能力、価値観、成果、再現性のある強み |
タイミング | 面接の冒頭や交流の場 | 履歴書、ES、面接などあらゆる選考場面で |
ここをしっかり区別しておくと、面接でも落ち着いて対応できますし、書類でも伝えるべき情報がぶれずに済みます。
また、自己紹介のあとに自己PRを重ねる場合も多いので、両者の役割を理解しておくことで、よりスマートな印象を残すことができるでしょう。

説得力のある自己PRを作る3つのステップ
自分の強みを明確にする方法
説得力のある自己PRを作るには、まず「自分の強み」を明確にすることが大前提です。ただ、「自分の強みって何だろう…?」と悩む方も多いですよね。特に新卒や社会人1〜3年目の方は、キャリアの実績が少なく、自信を持ちづらいかもしれません。
でも実は、強みは“特別な成果”や“他人を圧倒するスキル”だけではありません。あなたが自然にやっていること、周囲から感謝された経験、何度も繰り返し取り組んできたことの中に、強みのヒントは隠れているんです。
例えば、以下のような視点で過去を振り返ってみましょう。
- 人からよく頼られたことは?
→「調整役」「まとめ役」「丁寧に説明できる」など - 自分が努力した経験は?
→「計画的に物事を進めた」「諦めずに継続した」など - うまくいった体験の背景は?
→「工夫してアプローチを変えた」「チームワークを重視した」など
また、自分一人で考えるだけでなく、友人や先輩、家族などに「私の強みって何だと思う?」と聞いてみるのも非常に効果的です。第三者の目線を取り入れることで、自分では気づいていなかった長所が見えてくることがあります。
この「自分の強みを言語化する」作業は、やや地道かもしれませんが、自己PRの核となる部分なので、丁寧に取り組むことが重要です。
経験をエピソードとして伝えるコツ
強みが見えてきたら、次に大事なのが「その強みをどう伝えるか」です。ここでポイントになるのが、“エピソードを添えて話す”ということ。
人は、抽象的な言葉よりも具体的なストーリーに引き込まれます。例えば「私は協調性があります」と言うよりも、「アルバイト先で意見が対立した時に、両者の話を丁寧に聞いて、納得感のある解決策を提案した経験があります」と話す方が、ずっと印象に残りますよね。
そこでオススメなのが、エピソードを伝える際に**「PREP法」や「STAR法」**といった構成を意識すること。
ここでは簡単に「STAR法」をご紹介します。
- S(Situation):状況
例)大学のゼミでグループ発表を担当した - T(Task):課題
例)メンバーの意見がまとまらず、発表準備が遅れていた - A(Action):行動
例)中立の立場で全員の意見を整理し、役割を割り振った - R(Result):結果
例)発表は高評価を得て、チーム全員が満足する結果になった
このように構成すると、強みの背景や考え方まで伝わり、「この人はこういう行動を取るタイプなんだな」とイメージしてもらいやすくなります。
また、経験の大小に関わらず、「自分がどう感じて、どう動いたか」を丁寧に描くことで、相手の共感を得ることができます。実績よりもプロセスに価値がある、という視点を持っておくと、書きやすさもぐっと上がりますよ。

文章構成で差がつく!自己PRの型とは
結論ファーストで伝える理由
自己PRを書くときに「何から書き始めよう…」と悩む人は多いですよね。実は、読み手に伝わりやすい自己PRには**文章構成の“型”**があります。その中でも最も重要なのが「結論ファースト」で書くことです。
なぜ結論から伝えるのが良いのでしょうか?
それは、採用担当者が限られた時間の中で多数のエントリーシートや履歴書を読んでいるからです。最初の一文で「この人はどんな強みがあるのか」が分からなければ、印象にも残らず、読み飛ばされてしまう可能性があるんです。
たとえば、
- 「私の強みは、物事を粘り強くやり抜く力です。」
- 「私は課題に直面しても、計画的に取り組み、最後までやり遂げることを大切にしています。」
といった風に、まずは“何を伝えたいのか”を一言で示すことで、相手が話の軸を理解しやすくなります。
この「結論→理由→具体例→まとめ」の順番で書くことで、論理的で説得力のある文章に仕上がるのです。これはビジネスシーンでもよく使われる構成なので、今のうちから慣れておくと社会人になってからも役立ちますよ。
STAR法で説得力アップ
前章でも軽く触れた「STAR法」は、自己PRを論理的に、かつエピソードを活かして書くための非常に有効なフレームワークです。ここではもう少し詳しく解説します。
S(Situation):状況
まず、どんな場面・背景だったのかを簡潔に説明します。ポイントは、読み手が状況をイメージできるように書くことです。
例:「大学のゼミで、あるプロジェクトのリーダーを任されたときのことです。」
T(Task):課題
次に、その状況で自分が直面した課題や果たすべき役割を伝えます。ここで課題の大きさや難しさを伝えられると、後の行動の価値が際立ちます。
例:「メンバーの意見が割れており、発表までの準備が大幅に遅れていました。」
A(Action):行動
ここが最も重要なパートです。あなたが何を考え、どう動いたのかを具体的に書きましょう。特に「自分ならではの工夫」「意識した点」が入っているとオリジナリティが出ます。
例:「全員の意見を整理して、共通点を見つけ出し、話し合いの中で役割を明確化しました。」
R(Result):結果
最後に、その行動によってどんな成果が得られたかを書きます。ここでの“成果”は、数字でなくてもOK。チームの雰囲気がよくなった、先生から褒められた、などでも十分に価値があります。
例:「無事に発表を成功させ、ゼミ内でも高評価を得ることができました。」
このようにSTAR法を使うと、単なる経験談ではなく、「この人はどんな場面で、どう考え、どう行動できるのか」というビジネスパーソンとしての素養が伝わります。
さらに、文章の読みやすさ・説得力もアップするので、「伝えたいことはあるけど、うまくまとまらない」と感じている方には特におすすめの方法です。

読み手に刺さる表現テクニック
抽象的な表現を避ける方法
自己PRでよくある失敗のひとつが、「抽象的な表現で終わってしまう」ことです。たとえば、「私はコミュニケーション能力があります」「責任感が強いです」といった表現。確かに一見すると魅力的に見えますが、これだけでは説得力がありません。なぜなら、「その能力をどう発揮したのか」が見えてこないからです。
読み手(面接官や採用担当者)は、「それってどういうこと?」「どんな場面で活かされたの?」と常に具体性を求めています。だからこそ、抽象的な言葉を使うときは、必ずその裏付けとなる具体的なエピソードや行動をセットで伝える必要があります。
例えば、次のように表現を変えてみましょう。
- 抽象的な表現:「私は粘り強く取り組むタイプです」
- 具体的な表現:「私はゼミの研究発表において、資料作成が思うように進まず苦戦しましたが、毎日1時間ずつ改善を続け、最終的に予定通りに仕上げることができました」
このように、抽象的な言葉を使いたくなったら、「いつ・どこで・誰と・何を・どうやって・結果はどうなったか」を思い出してみてください。エピソードを加えることで、あなたの強みがリアルに伝わるようになります。
さらに、「自分にとって当たり前の行動」は、他人から見たら立派な強みだったりするもの。なので、他人から「すごいね」と言われた行動は、ぜひ具体的に書いてみましょう。
数字や成果で裏付ける伝え方
説得力のある自己PRに欠かせないのが、「根拠を示すこと」。そのために効果的なのが、数字や成果を用いた表現です。これは、ビジネスの世界でも非常に重視される要素で、「定量的な裏付け」があることで、主張の信ぴょう性が一気に高まります。
たとえば、次のような比較を見てみましょう。
- あいまいな表現:「私はリーダーシップを発揮して、サークル活動を盛り上げました」
- 数字を使った表現:「私が代表を務めた1年間で、参加者数が平均15人から30人に増えました」
数字を加えるだけで、どれだけの成果があったのかが一目瞭然になりますよね。このように、数値化できる要素がないか、常に意識して振り返ることが大切です。
また、数値が出しにくい場合は、定性的な成果でもOKです。
- 「チーム内での意見の対立が減り、円滑なコミュニケーションが生まれた」
- 「担当の教授から『今年一番の内容だった』と評価を受けた」
など、**「誰かから評価された」「行動によって変化が生まれた」**というポイントを押さえて伝えると、十分に説得力を出すことができます。
加えて、自分の行動の“再現性”をアピールするのも効果的です。つまり、「この強みは、今後の職場でも同じように発揮できる」ということを伝えるのです。たとえば、「このように課題を細分化し、計画的に取り組む姿勢は、今後も変わらず活かしていきたいと考えています」といった形ですね。

よくあるNG例とその改善方法
印象に残らないPRの特徴とは
これまで自己PRの作り方についてお伝えしてきましたが、実際には「頑張って書いたのに、いまいち伝わらなかった…」というケースも少なくありません。ここでは、よくあるNG例を通じて、「伝わらない自己PR」にありがちな特徴を紹介します。
まず1つ目のNGパターンは、「抽象的すぎる表現」。これは第4章でも触れましたが、「頑張りました」「やり切りました」などのふんわりした言葉だけでは、読み手に強みが伝わりません。たとえ実際に努力していたとしても、それがどのような行動で、どう結果につながったのかがわからないと、印象に残らないのです。
2つ目は、「ストーリーがぼんやりしている」ケース。強みや経験の要素が点在していて、読み手が「結局何をアピールしたいのか?」と迷ってしまうような文章です。自己PRは、ある意味で“ひとつの物語”。冒頭で主張した強みに対して、その証拠となるエピソードがきちんと裏付けされていないと、説得力は弱まります。
3つ目のNGは、「長すぎる説明で本題が見えない」こと。意外に多いのが、背景や経緯を丁寧に書きすぎて、肝心の強みや成果にたどり着くのが遅れてしまうパターンです。自己PRはプレゼンのようなもの。伝えたいことは冒頭で明示し、そこに向かってエピソードを組み立てていく必要があります。
また、ありがちなミスとしては次のような例もあります:
- 過去の話だけで終わってしまい、「今後どう活かすか」がない
- 一つの経験に絞りきれず、いろんな話を盛り込みすぎて焦点がぼやける
- 過剰な自己評価や自慢になっていて、謙虚さがない印象を与える
こうしたNGを避けることで、伝わりやすく、かつ魅力的な自己PRに近づけます。
魅力が伝わるように改善するポイント
それでは、印象に残らないPRをどう改善すればよいのでしょうか? ここでは、伝わる自己PRに変えるための具体的なポイントをいくつかご紹介します。
1. 伝えたい強みは1つに絞る
「私は協調性も行動力も責任感もあります!」と言いたい気持ちはよくわかりますが、詰め込みすぎると逆効果です。伝えたい強みは1つに絞り、それを深掘りすることで印象に残りやすくなります。
2. 「相手目線」で書く
自己PRは「自分がすごいことを言う場」ではなく、「相手に自分の価値を伝える場」。そのため、「この強みが企業でどう活きるのか」「どんな貢献ができるのか」を意識して書くと、ぐっと伝わりやすくなります。
3. ビフォー・アフターを意識する
成果や変化を伝える際には、「行動前」と「行動後」の比較を入れることで説得力が高まります。たとえば、「イベント参加者が倍になった」「意見がまとまらなかったチームが団結した」など、前後の変化がわかると、読み手にインパクトを与えることができます。
4. 感情や気づきも盛り込む
「どんなことを考えてその行動をとったのか」「そこからどんな学びを得たのか」など、気持ちや成長のプロセスを加えると、文章に深みが出て、共感されやすくなります。
5. 最後は未来につなげる
自己PRの最後は、「だから今後、こういう形で貢献したい」と未来の姿を描くことで、単なる過去の話に終わらず、意欲的な印象を与えられます。

まとめ
自己PRは、新卒や若手社会人が自分の強みを企業に伝えるための重要なツールです。しかし、ただ自分の長所を並べるだけでは、相手に響く自己PRにはなりません。この記事では、自己PRの基本的な役割から始まり、説得力を持たせるための構成・表現方法、さらにはありがちなNG例まで、段階的に詳しく解説してきました。
まず大切なのは、自己PRの目的を正しく理解すること。自己PRは「自分の価値を相手にどう伝えるか」を考える場であり、自慢話ではなく、企業と自分との“接点”を探る作業でもあります。その視点に立つことで、自己中心的な文章ではなく、「この人と一緒に働きたい」と思ってもらえるような内容に近づけることができます。
続いて、説得力を高めるためには、「自分の強みを明確にすること」と「具体的なエピソードを添えること」が不可欠です。強みは特別なスキルでなくても構いません。日常の中で何度も繰り返してきた行動や、人から感謝された経験の中に、あなたらしさが隠れています。そして、それをSTAR法などのフレームワークに沿って伝えることで、相手に伝わりやすくなり、あなたの価値がより具体的にイメージされるようになります。
さらに、抽象的な表現を避け、数字や成果を使って裏付けを持たせることも大きなポイントです。実績の大小にかかわらず、行動のプロセスとそこから得た学びをしっかり描くことで、読み手の共感や納得を得ることができるでしょう。
一方で、よくあるNG例にも注意が必要です。強みを詰め込みすぎたり、背景の説明が長くなりすぎたりすると、何を伝えたいのかがぼやけてしまいます。伝えるべきは、「一番伝えたいことを、最も伝わりやすい形で」表現すること。そのためには、「強みは1つに絞る」「相手目線で書く」「行動と成果を結びつける」などの工夫が欠かせません。
最後に、自己PRを完成させたら、それが“今後の仕事でどう活かせるのか”という視点を忘れずに。企業はあなたの過去だけでなく、未来への期待を込めて選考しています。だからこそ、「私はこういう強みを活かして、御社でこのように貢献したい」といった未来志向の締めくくりがあると、より好印象を与えることができます。
自己PRは、自分自身を見つめ直す大きなチャンスでもあります。焦らず、一歩ずつ、自分の言葉で「自分らしさ」を形にしていきましょう。このプロセスを通して、あなた自身の魅力に改めて気づき、自信を持って次のステップへ進めるはずです。