自己PRで「みんな同じ」と思われる原因とは?
採用担当者の本音とよくある失敗例
就職活動中、多くの学生が抱える悩みの一つに「自己PRが他の人と似たような内容になってしまう」というものがあります。実際に採用担当者の声を聞いてみると、「またこのフレーズか」「どの学生も同じことを言っているように感じる」といった本音が少なからず聞こえてきます。
その背景には、学生たちが「正解」を求めてテンプレート通りの自己PRを作ってしまうことがあります。たとえば、「私は責任感があります」「チームで協力して取り組みました」「アルバイトで学んだことを活かしたいです」といった文言は、よく見かける内容です。
もちろん、責任感や協調性は大切な要素ですし、アルバイトの経験も貴重です。しかし、重要なのは「それをあなた自身がどのように経験し、どのように活かしてきたか」という具体的なエピソードや背景の部分です。この深掘りが浅いと、どうしても他の学生と同じ印象を与えてしまいます。
また、企業のホームページや説明会で言われた「求める人物像」に寄せすぎて、自分の本来の強みや価値観がぼやけてしまうケースもあります。これも「無難だけど印象に残らない」自己PRになってしまう大きな原因の一つです。
なぜ似たような自己PRになってしまうのか?
「他の人と似たような自己PRになってしまう」理由は、大きく分けて3つあります。
1. 情報の集め方が似ているから
就活サイトや本、SNSなど、情報源が限られている中で、学生たちは同じようなフォーマットや事例を見て自己PRを作成します。そのため、自然と構成や使う言葉が似通ってしまうのです。
2. 自分らしさを出す勇気がないから
多くの学生が「この内容で大丈夫かな?」「変わったことを言ったら評価が下がるかも」と不安に思い、安全圏の表現にとどまってしまいがちです。しかし、それこそが「印象に残らない」自己PRになってしまう原因です。
3. 自己分析が浅いまま書いてしまっているから
自分の経験や価値観を深く掘り下げることなく、とりあえず「それっぽい」ことを書いてしまうと、当然ながら他の人と似た内容になります。たとえば、「ゼミのリーダー経験」や「文化祭の実行委員」などは題材としてはよくあるものですが、その中で何を考え、どんな行動をしたのかを深く掘り下げなければ、差別化はできません。

自己表現と自己PRの違いを理解しよう
自己表現は「らしさ」、自己PRは「伝え方」
就活の場面でよく混同されがちな言葉に「自己表現」と「自己PR」があります。どちらも自分のことを伝える手段ではありますが、それぞれの目的や使いどころは大きく異なります。違いを理解して使い分けることで、より効果的に自分の魅力を伝えることができます。
まず、「自己表現」とは、自分の考えや価値観、性格、経験をありのままに表すことを指します。いわば、自分の内面を外に出す行為です。たとえば、SNSでの発信、趣味の活動、服装の選び方なども広い意味では自己表現の一つです。就活においては、エントリーシートの書き方や面接での話し方にもその人らしさが出ます。
一方で、「自己PR」は“相手に伝わるように工夫された自己表現”です。つまり、自分がどれだけ魅力的な人物であるかを、企業が求めるポイントに合わせて戦略的に伝える手段なのです。自己表現が「自分の好きなことを自由に話すこと」だとしたら、自己PRは「相手が知りたいことを自分の言葉で伝えること」と言えます。
この違いを理解していないと、自分らしさを押し出そうとするあまり企業が求める方向とズレてしまったり、逆に企業に寄せすぎて自分の良さが消えてしまったりというミスマッチが生じてしまいます。
大事なのは、「自己表現で自分らしさを発信しながら、自己PRで相手に伝わる形に整える」ことです。このバランスを取ることが、就活で他の人と差をつけるうえで非常に重要なポイントです。
両方をバランスよく使うことが大事な理由
就活で印象に残る人は、「自分らしさ」と「伝え方」の両方に長けています。たとえば、ある学生が「小学生のころから図鑑を読むのが好きで、今でも植物の名前をすぐに言える」という話をしたとしましょう。これだけだと「変わってるね」で終わってしまいます。しかし、そこに「観察力や情報収集力が高く、大学ではデータ分析のゼミでその強みを活かしています」と続ければ、それは立派な自己PRになります。
つまり、自己表現が土台となり、その上に自己PRを構築するイメージです。自己表現がなければ中身のない自己PRになってしまいますし、逆に自己PRばかりを意識すると「よくある型にはまった話」になってしまいます。
また、自己表現は面接の場だけでなく、SNSやインターンシップ、OB・OG訪問など、さまざまな接点で相手に伝わります。どんな言葉を選び、どんな態度で話し、何に興味を持っているか。そうした全体の印象が「この人、他とちょっと違うな」と思わせる材料になるのです。
企業は「この人と一緒に働きたいかどうか」を見ています。スペックだけで判断するわけではありません。だからこそ、自分らしさを失わずに、相手にわかりやすく伝える工夫が大切なのです。

自分らしさを引き出す自己分析の進め方
差がつく自己分析の視点
就活で「自分らしさ」をしっかり伝えるためには、まずはその“自分らしさ”を自分自身が理解していなければいけません。そこで必要になるのが、自己分析です。
自己分析と聞くと、「長所・短所を紙に書き出す」「過去の経験を時系列でまとめる」など、型にはまった方法を思い浮かべる人も多いかもしれません。しかし、それだけでは表面的な理解で終わってしまいがちです。ここでは一歩踏み込んだ視点で、自分らしさを深掘りしていく方法をご紹介します。
まず意識してほしいのは、「何をやったか」ではなく「なぜそれをやったのか」「どう感じたのか」を掘り下げることです。たとえば、「大学時代にカフェのアルバイトをしていた」という経験があったとします。ただそれを事実として語るだけでは自己PRにはなりません。
そこに、「なぜそのアルバイトを選んだのか」「どんな場面でやりがいを感じたのか」「どんな困難があり、それをどう乗り越えたのか」「その経験から何を学び、自分にどう活かされたか」といった問いを重ねていくことで、自分らしいエピソードへと昇華されていきます。
また、第三者の視点も非常に有効です。友人や家族、ゼミの先生など、身近な人から「私ってどんな性格だと思う?」「私の強みって何だと思う?」と質問してみてください。自分では気づいていなかった一面や、意外な強みが見えてくることがあります。
そして、自分の価値観やモチベーションの源泉に着目するのもポイントです。「どんなときにやる気が出るか」「どんなことに怒りや違和感を感じるか」「どんな場面で一番自分らしさを発揮できるか」など、自分が「大事にしていること」に目を向けることで、他の人とは違う個性が浮かび上がってきます。
経験の深掘りと具体エピソードの掘り起こし方
自分の魅力を伝えるには、抽象的な性格やスキルではなく、「具体的なエピソード」が必要不可欠です。ここでは、印象に残る自己PRを作るためのエピソードの深掘り方をご紹介します。
まず、経験を時系列で書き出す「ライフラインチャート」を作成するのも一つの方法です。これは、自分の人生の中で起きた出来事を「楽しかった」「つらかった」といった感情の振れ幅とともに線で表す手法です。感情が大きく動いた出来事ほど、あなたの価値観や行動特性が強く現れています。
次に、その出来事に対して「なぜその行動をしたのか」「他の人ならどうしていたか」「結果としてどう感じたか」といった問いを使って、自問自答してみましょう。これを「WHY」を3回繰り返す「3回WHY法」で掘り下げると、より深く自分の本質にたどり着けます。
たとえば、「文化祭でリーダーを務めた」という経験をPRに使いたいとしましょう。
- なぜリーダーをやったのか? → 自分の提案を形にしたいと思ったから
- なぜ提案を形にしたかったのか? → みんなが楽しめるものを作りたかったから
- なぜみんなが楽しめることにこだわるのか? → 誰かの笑顔を見ると自分もやりがいを感じるから
このように深掘りすることで、単なる「リーダー経験」が「人の笑顔を原動力に行動できる人」という、その人らしいストーリーに変化します。
最後に、複数の経験から共通する価値観や行動パターンを見つけ出してみましょう。これを「自己テーマ」としてまとめると、エピソードに一貫性が生まれ、説得力のある自己PRにつながります。

差別化できる自己PRの作り方
決め手は「具体性」と「独自性」
他の就活生と差をつける自己PRを作るうえで、最も重要なのが「具体性」と「独自性」です。多くの学生が、「リーダーシップがあります」「協調性があります」といった抽象的な強みを口にしますが、それだけでは面接官の印象に残ることは難しいです。印象に残る自己PRには、“あなたにしか話せないストーリー”と、それを裏付ける具体的な行動・結果が必要です。
まず、具体性とは、実際の出来事や数字、行動の詳細を盛り込むことです。たとえば、「サークル活動で課題解決に取り組みました」では曖昧ですが、「所属していたフットサルサークルで参加率の低下が問題になった際、毎月イベントを企画することで参加率を40%から80%に改善させました」といえば、何をしたか、どんな成果を出したかが一目でわかります。
次に大切なのが独自性です。これは、経験の内容自体が特別である必要はありません。むしろ、どんなに一般的な経験でも、「なぜそれを選んだのか」「自分なりにどう工夫したのか」「何を学び、それが今どう活きているのか」といった視点で語ることで、あなたらしいストーリーになります。
また、「ユニークな体験=独自性」ではありません。例えば、「海外ボランティア」や「起業経験」など、一見すると目立つエピソードも、それをどう語るかによって印象は大きく変わります。逆に、アルバイトやゼミ活動といった身近な題材でも、自分らしい視点で掘り下げれば、独自性は生まれるのです。
つまり、他の人との違いをつくるためには、「何をやったか」よりも、「どう考え、どう行動したか」を丁寧に描くことがカギになります。
フレームワークで考える魅力的な構成法
では、差別化された自己PRをどう構成すればよいのか?ここでおすすめしたいのが、「STAR法」や「PREP法」といったフレームワークを活用することです。これらは、論理的でわかりやすい自己PRをつくるうえで非常に効果的です。
1. STAR法(Situation, Task, Action, Result)
この手法は、行動と成果に焦点を当てた構成で、面接官がイメージしやすいという特徴があります。
- Situation(状況):どんな場面だったのか?
- Task(課題):自分にどんな役割や課題があったのか?
- Action(行動):具体的にどんな行動を取ったのか?
- Result(結果):その結果どうなったのか?どんな学びがあったのか?
例)
「私は大学のゼミで発表のリーダーを務めました(Situation)。しかし、チーム内で意見が対立し、進行が滞っていました(Task)。私はメンバー一人ひとりと個別に話す時間を取り、意見を丁寧に整理しながら全体の方向性を見直しました(Action)。結果として、プレゼン大会で優秀賞を受賞し、メンバーとの関係性も深まりました(Result)。」
このようにSTAR法を使うと、時系列でストーリーが整理され、聞き手が理解しやすくなります。
2. PREP法(Point, Reason, Example, Point)
もう一つの方法がPREP法です。こちらは、結論を先に伝える構成なので、エントリーシートなどの文章表現にも適しています。
- Point(結論):私の強みは〇〇です
- Reason(理由):なぜなら〇〇だからです
- Example(具体例):たとえば〇〇という経験があります
- Point(再結論):この経験を通じて〇〇な力が身につきました
例)
「私の強みは、課題解決力です(Point)。なぜなら、常に現状の問題を見つけ、改善に取り組んできたからです(Reason)。たとえば、カフェのアルバイトで来店数が減った際、SNSでキャンペーンを提案し、売上を回復させました(Example)。この経験を通じて、周囲を巻き込みながら問題に取り組む力が養われたと感じています(Point)。」
フレームワークを使うことで、自己PRに一貫性と説得力が加わります。そして何より、自分の経験を客観的に整理する練習にもなるため、面接本番でも慌てずに話せるようになります。

自己PRを面接で自然に伝えるために
暗記ではなくストーリーで話す練習法
せっかく自己分析を深め、独自性のある自己PRをつくったとしても、それを面接でうまく伝えられなければ意味がありません。多くの就活生が面接でつまずく理由の一つが、「自己PRを丸暗記してしまっていること」です。
たしかに事前に文章を用意しておくことは大切ですが、それをそのまま一言一句覚えて話そうとすると、不自然になりがちです。途中で言葉が飛んでしまったり、緊張で頭が真っ白になったりすると、その後の展開も崩れてしまいます。
そこでおすすめしたいのが、ストーリーとして自己PRを語る練習です。つまり、話す内容の流れを「ストーリーの場面」として頭に入れておくのです。たとえば、
- 課題があった状況(始まり)
- 自分が取った行動(展開)
- その結果と学び(結末)
この3つのパートを“物語”のように記憶することで、話すときに多少言葉が変わっても、自分らしく伝えやすくなります。また、ストーリーは聞き手にとっても記憶に残りやすい構成です。
さらに、話すときには「間」を意識することもポイントです。自信がないと早口になりがちですが、ゆっくりと区切りながら話すことで、落ち着いて見え、内容も伝わりやすくなります。練習の際にはスマートフォンで録音して自分の話し方を客観的に確認すると、改善点が見えやすくなります。
フィードバックをもらうときのポイント
自己PRをより洗練されたものにするためには、第三者からのフィードバックを活用することがとても有効です。特に就活経験者や、企業で働いている社会人に聞いてもらうと、採用側の視点に近い意見が得られることがあります。
フィードバックを受けるときは、次のようなポイントを意識してみてください。
- 「伝わりやすさ」を確認する
→ 話の流れに違和感はないか、内容は理解しやすいかをチェックしてもらいましょう。 - 「自分らしさ」が感じられるかを聞く
→ ただのきれいごとではなく、その人らしさが出ているかを評価してもらうことが重要です。 - 「印象に残った点・残らなかった点」を聞く
→ 何が印象に残り、何が薄かったかを把握することで、強調すべき部分や削るべき部分が見えてきます。
また、フィードバックをもらったからといって、すべてをその通りに直す必要はありません。大事なのは、自分が納得できる形で、自分の魅力が伝わるかどうかです。アドバイスは参考にしつつ、自分らしさを損なわないように注意しましょう。
さらに、模擬面接を繰り返すことで、自分の話し方の癖や緊張の癖も見えてきます。就活サービスの模擬面接や、大学のキャリアセンター、友人との練習など、積極的に活用することで本番でも自然体で話せるようになります。

まとめ
就職活動において、「みんな同じに見える」と採用担当者に感じさせてしまうことは、内定獲得において大きなハードルになります。しかし、この記事で紹介したように、正しいアプローチをとれば、自分らしさをしっかりと伝え、他の就活生と差別化を図ることは十分に可能です。
まずは、第1章で解説した通り、自己PRが「みんな同じ」に見える主な原因は、「無難な表現にとどまってしまうこと」「自分の言葉で語れていないこと」「浅い自己分析で経験を語ってしまうこと」にあります。これは誰にでも起こり得ることだからこそ、「一歩深く掘り下げる」姿勢が他との差を生みます。
次に、第2章では、「自己表現」と「自己PR」の違いを明確にしました。自己表現は自分の本質的な考え方や価値観を自然に出すこと、そして自己PRはそれを相手に“伝わる形”に整理することです。ここで大切なのは、どちらか一方だけに偏るのではなく、自分らしさを軸に、相手に伝わる工夫をするというバランスです。
第3章では、自己分析の重要性と進め方について紹介しました。「何をしたか」だけでなく、「なぜそれをしたか」「どう感じたか」といった問いを自分に投げかけることで、より深く自分の価値観を掘り下げることができます。また、他者からのフィードバックを取り入れることで、客観的な視点も養えます。
そして第4章では、「具体性」と「独自性」を意識した自己PRのつくり方を解説しました。目立つエピソードがなくても、自分の視点や考え方を丁寧に伝えることで、“その人らしさ”はしっかり伝わります。STAR法やPREP法といったフレームワークを活用することで、論理的で聞き手に伝わる構成が可能になります。
最後に第5章では、実際に面接で自然に伝えるための練習方法についてお話しました。暗記に頼るのではなく、ストーリーとして自己PRを組み立て、状況や行動、結果を流れで語れるようにすることが大切です。また、模擬面接や録音、フィードバックを活用することで、自分の話し方や伝え方をより磨いていくことができます。
就活は、自分の人生の方向を決める大切なプロセスです。だからこそ、自分の強みや価値観を深く理解し、それを誰かにきちんと伝えられる力が必要になります。「みんな同じ」と思われないために必要なのは、自分自身を知ることと、相手の視点に立った表現力です。
この2つを意識することで、あなたの自己PRはきっと輝きを放つはずです。型にはまった言葉に頼るのではなく、自分の言葉で、自分らしいストーリーを語ってください。それが、あなたの「選ばれる力」へとつながっていきます。